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弁護士コラム

加藤弁護士 一日日記【第76回目の憲法記念日】

弁護士1日日記 令和5年5月度
【第76回目の憲法記念日】
令和5年5月3日、76回目の憲法記念日を迎えた。新聞では「9条問題」が取り上げられている。
昨年2月24日から始まったロシアのウクライナ侵攻が全く収まる様子がなく、力による現状変更の恐れをみんなが感じている。
昨年2月以来、防衛費増額論争が始まり、「強い国家」作りが前面に出て来ている。
朝日新聞が、岸田内閣が掲げる「敵基地攻撃能力」の保持は憲法9条の趣旨(専守防衛という思想)から逸脱しているのではないか、との視点から、2回に分けて検証するとして、まず5月3日の朝刊を使って、特集を組んでいる。
掲げた表題は「議論なき9条」である。国の交戦権を否定した9条の書きぶりから、現在の防衛議論が乖離し、9条が形骸化しているのではないかと言う指摘はすでに随分前から繰り返し述べられているが、私たちにとって大切なことは国や国民を守ることである。国破れて憲法が残ったという図は意味がない。
憲法は国家機関を縛る鎖(道具)であるが、国家機関の目的は「国土を守り、国民を守ること」である。
21世紀も間もなく4半世紀が経とうとしているが国際社会の混乱は減る傾向にない。
先日もスーダンの内戦から非難するため、自衛隊機がスーダンに飛んだ。
人間の歴史は「力による現状変更」の繰り返しである。
領地拡大という野望を封じて、「歴史の終わり」を迎えようとした第2次大戦後の宣言は未だ達せられていない。
我が国は、力による他国進出をしないと宣言した、それが憲法9条である。
しかし、書きぶりは「自衛権の放棄」のような表現であり、今日の混乱の基となっている。
「領土拡大を求めない」「力による紛争解決を求めない」という平和主義、それは歴史の到達点であり、我々が求める社会であるはずだ。
憲法改正議論を避けるべきではない。国を愛する国民の意思を示す行動を腫れ物に触るように回避すべきではない。
大切なことは軍備を拡大することではなく、国を守る熱い意志で固まった国民の団結である。

令和5年(2023年)5月3日
                        弁護士 加 藤 謙 一

(2023-05-08)