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弁護士コラム

加藤弁護士 一日日記【ウクライナに平和を(その6)】

弁護士1日日記 令和4年9月度
ウクライナに平和を(その6)
2022年8月30日、ソ連元大統領ミハイル・ゴルバチョフ氏が死亡した。91歳だったとのことである。
彼がソ連大統領として「ペレストロイカ」(立て直し)「グラスノスチ」(情報公開)を進めた結果、ソ連は崩壊し、ウクライナが生まれた。1991年12月のことだった。
国連のグテ―レス事務総長が「歴史の方向性を変えた唯一無二の政治家」だったと追悼の言葉を送ったと言うが、40代の頃、この崩壊の歴史を眺めていた自分を思い出す。すごいことが起きたと感じたものだった。
あれから30年が経て、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。プーチン大統領は、失われた30年を取り戻そうとしているのであろうか。
ウクライナ侵攻が始まった2日後、ゴルバチョフ財団は、「世界には人の命より大切なものはない。相互の尊重と双方の利益の考慮に基づいた交渉と対話のみが、最も深刻な対立や問題を解決できる唯一の方法だ」との声明を出し、一刻も早い戦闘停止と和平交渉開始を呼びかけたが、6か月を経てもその動きはない。
先般、グテ―レス事務総長がウクライナを訪問したことが報じられたが、事態の変化は現れていない。
独立した国家として、他国に侵略されて、国土と国民を差し出す指導者はいない。一方、他国を侵略し、なにも持たずに帰る指導者もいない。
誰が、なにがこの膠着状態を打破できるのか。侵略されたウクライナ国民が領土と国民の一部を差し出し、戦争をやめようというか。それは、ウクライナに内戦と言う混乱を招くであろう。
ロシア国民がいつまで戦争を続けるのかと言って立ち上がることは十分可能ではないか。ロシアにとって、如何なる大義と利益があってこのような戦争をしているのだと大きな声を上げることは可能と思われる。
勿論、戦争に反対する国内の勢力を反国家行為として言論の封鎖を時の権力は行うであろう。
言論の自由が保障されていない国家は恐ろしい。しかし、目を世界に転ずれば、言論の自由が保障されている国家の方が少ないのかも知れない。
「正義では腹が膨れない」国際政治の現実をどう破るか。我々は歴史を眺めている。
令和4年9月1日
                        弁護士 加 藤 謙 一

(2022-09-01)