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よくある質問

相続・遺言Q&A

7.

父が死亡し、遺産が600万円なりました。相続人は兄弟3人です(母は死別)。
父は生命保険をかけており、兄が保険金1000万円を受領することになっています。
兄は、保険金は遺産ではないので600万円を3分割すると言います。
あまりに不公平だと思いますが仕方がないのでしょうか?










7.









今回のケースのように、被相続人以外の者が保険金の受取人になっている場合には、保険金は遺産に含まれません。
もっとも、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合には、特別受益(民法903条)に準じて持戻しの対象となると判断された例もあり(最高裁平成16年10月29日)、本件でもお兄様が受領した保険金の額より過大となっており、「特段の事情がある」として、保険金の全部ないし一部を遺産として持ち戻し、遺産分割の在り方を計算し直す可能性があると思われます(※)。
事情によっては、本回答と異なってくる場合がございますので、まずは弁護士にご相談ください。




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(※)









最判平成16年10月29日民集58巻7号1979頁は、「特段の事情」の有無を判断する際の考慮事項として、 ①保険金の額、②保険金の額の遺産の総額に対する比率、③同居の有無、④保険金受取人である相続人及び他の 共同相続人と被相続人との関係、⑤各相続人の生活実態を挙げている。これについては、①、②を基本として これに諸事情を併せて考慮すべきあるという見解が有力である。
下級審裁判例では、保険金額が遺産総額に匹敵する事案(東京高決平成17年10月27日家月58巻5号94頁) や、保険金額が遺産の約61%を占める事案(名古屋高決平成18年3月27日家月58巻10号66頁)において「特段 の事情」に該当するとしている。
上記ケースについては、具体的な事情を検討する必要があるが、保険金額が遺産総額を大きく上回ることから、 「特段の事情」に該当するとされる可能性が高いと思われる。
なお、「特段の事情」が認められる場合にどのような額を持戻すのかについては、①支払われた保険料とする 見解、②死亡時に解約した場合の解約返戻金の額とする見解、③保険金の額とする見解、④満期までの支払う予定 であった保険料のうち、被相続人が死亡時までに支払った保険料の割合を保険金額に乗じた額とする見解などが あり、考え方が分かれている。

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